フーテンのメモ帳

書きたいときに書く為のフーテンのメモ帳。

ネパールで迎えた30歳。

  30歳の誕生日はネパールのポカラで迎えた。

  インドのマナリから陸路でバスを乗り継いで約3日半かけてポカラにたどり着いた。 到着した日の翌日が僕の誕生日だったので、一緒に旅をしている彼女がいつもより良いホテルを予約してくれてそこに2泊する事になった。

 

  彼女は僕の1つ下で、彼女とは約2年半くらい付き合っているのだが、付き合い始めたと同時に旅もスタートしていた僕達にとって誕生日を毎回違う場所で迎えるのは普通の事だった。

  28歳の誕生日は北海道の倶知安、29歳はニュージーランドオークランド、そして今回はネパールのポカラ。

  旅が日常になると来年の自分がどこにいるかなんてほぼ予想できない。でもそこが旅の面白いところだと思う。

  それと同じで旅をしていると自分の内面的な人間としての成長具合も、1年前の自分がまるで別人に思える程成長している事もある。

  例えば日本で定職についておおよそ決まったスケジュールの生活を送るのに比べると(職業にもよるが)旅をしている間は様々な制約から解放される。その中でも時間の制約からほぼ解放される事の恩恵はとてつもなく大きい。

  自分が本来は何をしたくて何の為に生きて行きたいのかについてゆっくりと落ち着いた気持ちで見つめ直す事が出来る。そしてそれが分かればその為に行動する時間もある。

  更に物理的に場所を移動し続けるという事は、常に自分の知らなかった新しい世界や人と出会い続ける事になる。

 そこで今までの自分の中の常識や偏見を手放して心を開いて素直に楽しむ事が出来れば、それは本当にかけがえのない経験になって自分の人間としての器も大きくしてくれると思う。

  ただし逆にサボろうと思えばいくらでも怠惰な生活を送る事が出来る環境なので腐るのも早い。

  どの方向に向かうにせよ旅をしているととにかく物事の展開が早いのだ。

 

  汗だくでポカラの街に到着した僕達は彼女の予約してくれたホテルへと早速チェックインした。

  タクシーを降りるとすかさずベルボーイが荷物を運んでくれて、フロントへ行くと冷たいウェルカムドリンクが出てきた。

  パンパンに詰まったバックパックを携えて、まるでヒッピーの様な恰好で汗だくで登場してきた僕達を見てホテルのスタッフは何を思ったのだろうか。それでも嫌な顔1つせず笑顔で部屋まで案内してくれた。

  そこは久しぶりに泊まる日本のちょっとしたリゾートホテル並みの快適なホテルだった。

  部屋は広くて綺麗なベッドにソファー、エアコンはもちろんでなんといってもバスタブが付いていた。 これは本当に嬉しかった。

  海外ではそもそも日本みたいに普段から浴槽に浸かるという習慣はあまりないらしく、インドなどでも公共の温泉には入れたが人は多いしお湯は汚いしで部屋の中でゆっくりお風呂に入れるのは最高に贅沢だった。

  他にも一階にはプールがあったりマッサージスパがあったり、とにかくニュージーランドを出国して約3ヶ月の間バリ、インドと一泊千円以内の宿で貧乏旅行をしてきた僕達2人にとってそこは夢のような極楽空間だった。 そしてそんな貧乏旅行の最中でもこんなホテルに泊まれたのはそこがネパールだったからだろう。他の国で同じランクの宿に泊まろうと思ったらもっとしていたに違いない。

  翌日にホテルで初めてアーユルヴェーダのマッサージも受けたがそれも想像していたより全然安かった。ご飯もしかり。

  そしてこのご飯に関してはインドとの国境を超えてネパールに入った瞬間からめちゃめちゃ美味くなった。なにを食べても大体美味しいのだ。日本食にしてもインドのそれと比べると3ランクくらい味が上がった気がする。

  だんだんとみんなが口を揃えてネパール良いよという理由が分かってきた気がする。 とにかく他にも人の優しさとか自然の豊かさとか挙げればキリが無いのだけど僕達2人はネパールの事が一瞬で好きになった。

 

  そんなネパールで30歳の誕生日を迎える事が出来て本当に良かった。

  そして誕生日を祝ってくれる人がそばにいるという事はとてもありがたい事だ。 もちろん1人旅のそれも1人旅だから出来る経験や出会いがあるかもしれない。

  でも誰かと一緒に旅をしながらその経験を共有出来るというのはとても贅沢な事だと思った。いつもありがとう。

 

  余談だが誕生日当日のランチはずっと食べたい食べたいと思っていた美味しい日本食を食べに行く事にした。 その味はインドで食べた日本食とは全く別物で、日本では普通にあるかもしれないが海外で食べる日本食にしてはかなり高レベルな味だった。

  日本を出て既に1年以上経過している僕にとってそれはまさに故郷の味だった。

  そしてお会計の時になって伝票を見るとなんとお会計が2222ルピーだった。普段からゾロ目を見ると嬉しくなる癖のある僕は(別にギャンブル好きではないよ)誕生日という事もあって、なんか良い30代になりそうだ!と勝手に1人でテンションが上がったのだった。